2012年5月12日土曜日

ブリティッシュロック名鑑 -Eric Clapton-


John Mayall & Blues Breakers with Eric Clapton

 クラプトンの最初期はもちろんヤードバーズで名を広めたというのがあるが、通な人にはやはりJohn Mayall&The Bluesbreakersでのセッションが一番思い入れが深いんじゃないかな。ヤードバーズのポップ性にうんざりしたクラプトンはもっともっと深くブルースをプレイしたかったというから正にこのバンドはうってつけだったことは容易に想像できる。

 アルバム「Bluesbreakers With Eric Clapton」に収録されたプレイを聴いていると実にノビノビ生き生きと演奏している様子を聴けるのでヤードバーズ時代と比べてはいけないが圧倒的に趣味に走っている(笑)。これも時代の産物でもあるかもしれんな。今でもクラプトンがライブで演奏するナンバーがいくつか収録されているっていうのも凄いんだけど、アルバム的には滅茶苦茶ブルースっていうナンバーばっかではなくって、そこら辺はさすがイギリス人らしくかなり独自解釈を施した感じのあるブルースが基調になっていて、でもクラプトンのギターはやたらとエグい音で鳴っているんだな。

 冒頭の「All Your Love」で多分一気に目が覚めるというか惹き付けられるちゃってさ、フレーズだけじゃなくって細かいギターの弦を指が滑る音とかいやらしくって良いなぁと思うしね。「Hideaway」や「Key To Highway」、「Ramblin On My Mind」なんてのも定番で、ギターを志すものがこのアルバムを聴いたらまずコピーしたくなる一曲だと思う。もちろんどの曲も教科書的なギタープレイばかりなので一曲二曲ってワケにもいかないんだろうけどね(笑)。しかしまあ、クラプトン一人でブルースしてるって感じのアルバムだなぁ。勝手な解釈なんだけど、それでいてロックっぽくというかポップにフレーズを組み立てているところはヤードバーズで鍛えられたワザかもしれん。あぁ、メイオールのハープも味があって良いなぁ…。

 そういえば先日ジョン・メイオール生誕70周年記念コンサートが開催されて、そのメインゲストがクラプトンとミック・テイラーってのが良いよね。まだ聴いてないし見てないのでその迫力ってのを実感してないんだけど、メイオールも相当気合い入ったままだっていうし、二人のセッションもあるっていうからちょっと楽しみなんだけどね。

Eric Clapton - From The Cradle

 ブルースメンとして個人的にはそんなに認識がないのだけれど、一般的にもマニア的にもかなりの度合いでブルースメンとして認知されている人、エリック・クラプトン。いやぁ、ブルースロックギタリスト、なんだよね、自分的には。もちろんヤードバーズからクリーム、デレドミあたりまでとかソロもいくつか…、っつうか大体持ってたし聴いたなぁと思う。でもやっぱりどうもホンモノ的香りがしないのか、あまりそういう認識はないんだよねぇ。

 …なんていう自分の認識を大きく覆してくれそうになった思い切りブルースアルバム「フロム・ザ・クレイドル」は実に楽しめた。リリース当時、ボロい車のラジオからこれが流れてきてさ。多分一曲目の「Blues Before Sunrise」だと思うんだけど、カーステなんて豪華なもんじゃなくってAMラジオレベルのオモチャみたいなラジオスピーカーだったから音悪くてさ、それでこのスライドギターからのイントロが流れてきて、「おぉ??」って思ってボリューム上げて聴いてたんだよね。そしたら凄く図太い声で歌が始まってさ、ソロももちろんブルースそのものでかなり感動したんだけど、何となく本能的にどこか違うなぁ、黒人のホンモノではないな、これは、ということはすぐに察知できて、となると白人だと誰がこんな渋いのやるかなぁ…なんて考えてたらさ、「エリック・クラプトンの新作より」なんて言うから驚いた。言われてみればクラプトンのギターなんだろうけど、この歌声が?とかこのスライドがクラプトン?やるなぁ〜と改めて見直した� ��て感じが強かったね。それで速攻買いに行って聴きまくりました。まぁ、音そのものが90年代なのでちとノスタルジックさはなかったんだけど、このギターと歌はかなり凄いぞ、と面白かった。ここまでギター弾きまくったアルバムってそんなにないんじゃないかな。しかもオリジナルの本人に近いようなフレージングでクラプトン節もしっかり効かせてるという奥の深さ。何曲かギター二人で弾きまくれば良いのになあと思うけど、まぁ、それもよし。


衝撃のmoneyhoney状態

 カバーの原曲ってのがもちろんあるんだけど、渋いんだよなぁ、ほんとに。主に50年代の作品が多いけど、1945年生まれのクラプトンがリアルでその頃に聴いていたワケではないので趣味的にそのヘンなんだろうね。それにしても偏ってるのは自分のスタイルに近いからなのかな。結構選曲は不思議だけど、作品は良いモノに仕上がってるから良し、か。ローウェル・フルソンとかエディ・ボイド、リロイ・カー、ジミー・ロジャースが何曲か。んで、自分も好きなんだけど、そしてクラプトンのセッションしたアルバムがあるフレディ・キング。いやぁ、話逸れるけどフレディ・キングは最高にかっこよいブルースギタリストだよ、ほんとに。ポール・ロジャースの「マディ・ウォーター・ブルーズ」が1993年にリリースされているけど、 それとはかなり趣が違うカバー曲ってのもなかなか面白いよね。やっぱクラプトンの方が年上ってことか、趣味の問題か…。ストーンズもこういう作品作れば良いのにね。そしてクラプトンのこの作品、ほぼ全曲ライブレコーディング一発ってことでオーバーダブなしってのも適度な緊張感とグルーブ感があるんだよね。やっぱバンドっつうかブルースロックってのはそういうのが良い。

 ってなことで久々に聴いたけど、やっぱり偽物のブルース作品(笑)。でも白人ブルース的にはかなり素晴らしい作品で、好きだな、こういうの。成り切れないがために成り切る、成り切りたい、っていう姿勢が良いのかもしれない。これでB.B.キングあたりがゲストで参加してチョーキング一発弾いたらクラプトン一瞬にして負けるもんな(笑)。だから英国のブルース好きな連中はいつまでたっても夢を追いかけていられるんだよ。

Derek and the Dominos - Layla and Other Assorted Love Songs

 エリック・クラプトンの代表曲と云えば? …「いとしのレイラ」。多分90%の人が否定しないと思う。よく言われる話なので簡単に…。まぁ、クラプトンがブルースを愛する余り、よりアメリカ南部の香りに惹かれていったところ出会ったバンドがデラニー&ボニーだったりするわけで、そこでクラプトンはこの辺と一緒になんともレイドバックした…、ま、そういう呼び方は後から付いたんだと思うけど、要するにエネルギッシュではなく枯れまくったサウンドに入っていったってことだね。それがデレク&ザ・ドミノスというバンド形態ができあがったお話のようだ。

 今となっては実に数多くの「いとしのレイラ」アルバムが氾濫しているのでよくわからないのだが、まぁ、アウトテイクスやらなにやらをいっぱい集めたものレイラ・セッションズやリミックスされたものもその中にはあるらしくって、当然デジタルリマスターされたもので良いんじゃないかと思うけど、実はこのアルバムってアナログ時代には二枚組の名盤と呼ばれた割にあまり聴いていない。何故か?多分ねぇ、かったるいブルースが実はすごくたくさん入っていて、全然ロックなテイストのアルバムじゃなかったから。もちろんどれもこれも素晴らしく聴き応えのあるフレーズが連発されているんだけど、どうしてもなぁ…。だから短命に終わったバンドなんでしょ?で、その有名な「いとしのレイラ」ってのは最後から二曲目に� ��ってるワケで、どうしても習性上アルバムってのは最初から聴かないといけないと思っているのでいつもいつも「いとしのレイラ」に辿り着くまでに疲れてしまったんだな(笑)。「Little Wing」あたりに来るとようやくほっとするんだけど、このカバーもなぁ…、ちょっとどうかと思います…ってなもんで、イマイチどころではないくらいの感じ。しかし改めてちょっと聴いてみたけど、ディスク2の方が良い曲揃ってるんだ(笑)。良い曲っつうと語弊があるけど、まぁ、知られた曲が多いってのかな。そう考えると今のクラプトンがライブをやるにもこのアルバムから数曲は選ばれるっていう点は凄い。

 そしてこのアルバムの目玉って云えば、やっぱりもの凄く耳を惹くデュアン・オールマンの参加だろうね。このスライドギターってのはホント度肝を抜かれるくらいのフレージングでさ、普通スライドギターって、やっぱ22フレットあたりまでの音で終わるような印象なんだけど、この人、ピックアップのところまで持っていって驚異的なサウンドを出しているんだよね。ああ、そういえば、それもともかく誰もが云うと思うんだが、「いとしのレイラ」の曲そのものが終わってから、それこそデュアン・オールマンのギターが鳴りまくった後に始まる鍵盤と流れるようなギターソロも安らいで良いよなぁ。あの鍵盤のフレーズは凄く好きだ。

 あとね、ジャケットが実は結構気に入ってる。中の写真はいかにも時代的って感じなんだけどさ、ジャケ良いよねぇ。あんまり中味についての印象は良くないんだけど、なぜかやっぱり嫌いにはなれないアルバムかな。クラプトンもこの頃良いギター弾いてるしさ。あぁ、すっかり忘れてたけど、この曲って横恋慕の歌詞だったんだよな…。うん、かっこいいかもしれない。

Eric Clapton - Rainbow Concert

 各イベント事にはことごとく参加していることの多いエリック・クラプトン今となっては不動の人気を誇るエレガントなおじさんミュージシャンなんだけど来歴を知っているロックファンからすると、どうなのかなぁ…、ま、別にファンを裏切ることしてるワケじゃないけどその人気度合いには少々困惑気味な部分はあるだろうね。でもそれでやることが変わるワケじゃないから良いか。


屋はあなたの友人が誰であるかを調べる

 さてさて、そんなエリック・クラプトンではあるが、クリームを解散してデレク&ドミノスの傑作を飛ばした後はかなり悲惨な状態に陥り、全く音楽活動をしていないに等しい時期があった。それでもこないだ書いた「The Concert for Bangladesh」ではジョージのためにライブに参加はしたものの、それ以来全く音沙汰無しという状態。部屋に籠もり10代の少女を家に囲ってヘロイン浸りというなんとまぁ堕落的な生活。カネの心配しなくて良い堕落モノは羨ましいものだ…。ん?ちと違うか(笑)。

そんな生活を見かねたピート・タウンジェンドが何とかしないといかん、ってことでエリック・クラプトン再起のためのコンサートと題して1973年1月13日14日と二日間に渡りロンドンのレインボウシアターでショウを開催することに決めて、何とかこの一流ミュージシャンをもう一度世間に出そうとしたものだ。その様子を記録したのがLP時代にはあまり評判のよくなかった「Eric Clapton's Rainbow Concert」というアルバム。うん、確かにジメっとしていて覇気もなく、音も籠もった感じであまり聴きたいようなアルバムじゃなかったという印象だったけど、どうやらCDになって、リマスタリングされて曲順もセット通りに近い形で収録されて8曲も多く入れられたものが1995年にリリースされると評価が変わったようだ。

 エリック・クラプトンのギタープレイはまぁ、確かに凄く良いというものでもないけど、バックを支えるピート・タウンジェンドの頑張り具合が分かるプレイとかこういう時には常に明るい性格のロン・ウッドのプレイが光るとか、はたまたスティーヴ・ウィンウッドの天才的な歌声とピアノに救われるとか聴き所は多い。この二日間で行われたショウからの抜粋版ってことでそれなりに優れたライブが入っているんだから悪くないよね。エリック・クラプトンのギターを聴くためというならばちと違うけど、こういうのって背景が重要だし、それぞれの意気込みもそういう時に変わるものだし、ピート・タウンジェンドがこんなに人のために入れ込むなんてことはそうそうないので、珍しい。

 ま、それでもエリック・クラプトンは結局一年くらいはハマっていて…、あ、これはもうパティへの横恋慕も含めてってことになるけど結局翌年1974年に活動再開、その時もピート・タウンジェンドが友情出演するライブが何回かあったらしい。う〜ん、ピート・タウンジェンドって結構ヒマだったんかな?

Eric Clapton - 461 Ocean Boulevard

 ベックが世紀の一枚を発表する頃、三大ギタリストの筆頭でもあったクラプトンはと言えば、「461 Ocean Boulevard」をリリースしていた頃=すなわちレイドバック時代だったワケで、そのあまりにも差が開きすぎてしまったこの二人の音楽性というか人生と言うか表現方法と言うのか…、ジャケットからしてどこか寂れたシーサイドホテルの様相だったりして決して明るく心地良いサウンドには思えないしロックなサウンドにも思えないという佇まいだ(笑)。いや、中味はそうでもないんだけどね。…っつうかこの頃のクラプトンって私生活では散々でドラッグまみれになっていたトコロからの復帰作だったんだな。その割に出来上がっている音はかなりまとも、いや、だからまともなのか。個人的な好みではないけれど、今聴いてみるとかなりロックしてるんだ、と思った。

 「 Motherless Children」から結構勢いあるし…ただ、やっぱりレイドバックした雰囲気が漂っているので脳天気にはならないっつうのが良いのかな。曲調的にはそれほど突出したものってあんまり入ってないアルバムだけど、結構聴いたのかなぁ、高校生くらいの頃にね。「 Let It Grow」とかあんまり好みじゃないけど、やっぱりこのアルバムは「 I Shot The Sheriff」が一番マッチしているのかな。ご存じボブ・マーリーの曲のカバーね。緊張感というのか気負いは凄く感じる作品だってのは大きいのかもしれない。それはアルバム全体に云えることでもあるなぁ。でもなんであまり好みじゃないんだろ?ま、理由なんてないか(笑)。

 一応書いておくとクラプトンソロ史の70年代のアルバムの中では結構な名盤に入るハズで、こういうのもクラプトンなんだよっていうのは知っておくべきことかな、と。

Eric Clapton - Behind The Sun

 70年代を生き抜いてきたロックミュージシャンのとってみると80年代というのは何と生きにくい時代だったのだろうかと思う。当時の本人達は実際にそんなことを思っていたのかどうかわからないけど、今となって振り返ってみると誰もが自己を主張しつつ結局はあまり大した物が見つからなかった、というか70年代の自分達が一番輝いていたということに改めて気付いたというレベルではないだろうか。それでももちろん時代の波に乗って音楽性を変えながら生き抜いてきた人もいる。デヴィッド・ボウイやストーンズなんてのはその代表でもあるだろう。そしてもう一人、この人も激しい自己変革と共に生き抜いた、とも云える。


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「Behind the Sun」、1985年リリース作品で、80年代になってからは「アナザー・チケット」「Money and Cigarettes」という相変わらず渋い音のアルバムをリリースしていたもののもちろんあまりパッとせず、英国は思い切り80年代ポップスの風が吹き荒れていった時代、丁度クラプトンがアルバムをリリースしなかった頃なのだが、そういう音楽シーンを尻目に色々と考えたのか、試行錯誤したのかわからんが、とにかく今までとは全く違う角度で制作したアルバムになったのが「Behind the Sun」だ。

 プロデューサーのみならず楽曲アレンジなどにも多大に貢献していたのがフィル・コリンズという話は有名。クラプトンって自分で曲とかはつくるけどアレンジなどは全部人任せらしいのは多分この辺のアルバムから始まったんだろうな。フィル・コリンズによるAOR的なアレンジは正に彼が自分でジェネシスをポップバンドに仕立て上げてソロアルバムも成功に結びつけた手法をなぞったもので、クラプトンもこれに乗ったというところか。その甲斐あってとっても聴きやすくなっているのは事実で、クラプトンのギタープレイはまるで単なるスタジオミュージシャンと同じレベルで聴けるようになっていて、歌は渋い声で歯切れ良く聴かせてくれるというもので、ロックというよりもミディアムテンポのオシャレな楽曲が並び、80� ��代半ばらしいゴージャスなアレンジがアルバム全編を包み込んでいる。なんつうおしゃれさだ…。

 一曲ごとにそりゃ云いたいこともあるんだけど、そうだなぁ、どれもこれもあまり得意ではない曲かな。ただ、さすがだな、って思うのは例えば「Forever Man」なんかで聴けるんだけど、一瞬だけギターソロが弾かれる小節なんてのがある時は凄くクラプトンのシャープなギターが出ているというのもある。「Same Old Blues」なんかだとちょっと頂けない感じなんだけどさ。他はまぁ、どれもこれもあれそれも…ってなトコで…。かと云って「Forever Man」という曲が良いかと云うと、決してそんなワケではないのだが。

 ファンの間でもあまり評判がよろしくないようだけど、そういったことはあまり気にしてなくって、やっぱり自分的に好みでないなぁ、と。まぁ、これで売れるアルバム作りってのがわかってきたクラプトンは次作「August」で更に洗練されてベルサーチを着こなしてダンディーになっていくのだ…。

Eric Clapton & B.B.King - Riding with the King

 自分の曲を昔から憧れていたミュージシャンが取り上げて弾いてくれるというのは果たしてどんな想いだろう?プレイする側はどんどん持ってこい、ってなもんだろうけど、それにはそれなりのモノじゃなきゃ取り上げないだろうし、やはり光るモノがないけりゃ相手にしないだろう。しかしブルース界のキングと神と呼ばれる男達の競演アルバムでその夢が実現してしまった若者がいる。それがドイル・ブラムホール二世だったりする。云わずと知れたクラプトンとBBキングの共演アルバムとなった記念碑的作品にプレイヤーとしてだけではなく曲の提供者になっているのだ。

 もともとはBBキングの古い楽曲に再度スポットを当てていこうという趣旨の元だったが、クラプトンの大好きな「Key To The Highway」などいくつかわがままな曲を入れ込んでいったものだが、普通それだけで満杯になろうというものだがどういうワケなのか、先のドイル・ブラムホール二世のオリジナル曲が二曲ばかり取り上げられている。しかもBBキングとクラプトンの味がたっぷりついているのでそれはそれは極上の作品になっているのだが、そもそもそれにマッチした楽曲じゃなきゃ取り上げないだろう。そして意識して聴いてみると、確かにアルバムの流れにはピッタリ当てはまっているし他の楽曲と並べられても何ら違和感がない。「Marry You」と「I Wanna Be」なのだが、後者などは見事に古き良きR&B的コーラスを据えたものでまさかこれが新曲とは思えないような曲なんだな。素晴らしい。しかし面白いのはこの二曲、ドイル・ブラムホール二世の1999年の作品「Jerrycream」に収録されている曲で、ここでは至上の二人にカバーされたという見方でもいいのかな。まぁ、いずれにしても凄いことだし、若きドイル・ブラムホール二世にしてみればさぞや嬉しいことに違いない。

 そしてこのアルバム、深く語る必要もないくらいに素晴らしいブルース作品で、クラプトンの個性とBBキングの一発必殺の個性がぶつかりあったもので、ステレオで左右に分けられた一貫した録音も面白いものだ。もちろんフレーズも別物だし声も違うけど、一番はギターの音色一発。昔ならBBキングが一発弾いたらみな消し飛んでしまうくらいのパワーだったんだけどさすがにこの頃のクラプトンはそんなことでは消し飛ばないくらいのプレイを持っているのでスリリングに楽しめるものだ。ジャケットからして楽しそうだしさ、真っ先に飛びついて買ったもん。やっぱこういうスリリングな瞬間がブルースの面白いところですな。多分何度も録音したとは思えないしさ。その分ライブ感も良いしね。ちなみにバックはクラプトンバンド のお馴染みの面子で揃えられているし、そこにドイル・ブラムホール二世も参加している…、っつうかその前後にはもうクラプトンと仕事してるしね。


Eric Clapton - With George

 ロジャー・ウォーターズがピンク・フロイド離脱後の1984年に初めてリリースしたソロアルバム「ヒッチハイクの賛否両論」ではなんとエリック・クラプトンがギタリストとして参加している。後の「死滅遊戯」ではジェフ・ベックがエグいギター弾いていたのもさすがロジャーって感じなんだけど。で、この頃のクラプトンはあまりパッとしない時期だったこともあってか、なんとロジャーのこのツアーにも帯同して話題作りに事欠かなかったのだが、もう一つの思惑、即ち全く同じ時期にギルモア率いる新生ピンク・フロイドもツアーを行っており、真正面からぶつかっていったワケだ。しかし、ロジャーの方は見事に名前負けしたせいか、あまり大成功とはいえない結果に終わったので、このクラプトン参加によるツアーの中身は� �沙汰になることがなく、今でもあまり語られないのだが、先日スマトラ沖地震のチャリティイベントにおいて実に久々にこの二人が同じステージで演奏をするという機会に恵まれたので見た人も多いのかな。

 で、クラプトンだが、多数のソロアルバムをリリースしているし今でも精力的に活動しているもはやバリバリのベテランアーティストで一般大衆にも知られた人になっているので細かいことは抜きで大丈夫なんだけど、ソロアルバムで凄い名作って何かあったかなぁって考えてみるとあまり思い当たらなくて、好きなのはやっぱりクリームくらいになってしまうのだった。あ、あとは黒人ブルースマンとのセッションとか、ジョージ・ハリスンとの来日公演を収録したライブアルバムでの演奏とかだったりする。ジョージ・ハリスンとの日本公演は自分でも見に行ったんだけど、たまたま一番良い演奏だった日みたいで、クラプトンが何かの曲を演奏した後に感極まってベーシストのネーザン・イーストと抱き合ってたシーンを見ていた� ��いいライブだったな。…と思ってて何年かしたらリリースされたのがこのジョージの「ライブ・イン・ジャパン」なのだった。

 なんか取り留めのない文章になってしまったんだけどクラプトンってやっぱりセッション活動のリラックスした単にギタリストとしての参加の方がかっこいいんだよなぁ。映像だとBBキング達との「スーパーセッション」とかベックとの「シークレットポリスマンズコンサート」とかさ、CDだとフレディ・キングとのセッションを収めた「Freddie King 1934-1976」とかスリリングな緊張感が良かったり、ストーンズのライブに飛び入りした時のジャムとかも凄く良いしね。「いとしのレイラ」ってのも結局セッションに近いものを収めたアルバムだし、何かそんなイメージだなぁ。

Eric Clapton - Fiends & Angels (Martha Velez )

  そういえば…、随分昔にその存在を知りながらもレコード探しをしていた頃にはほとんど見かけることなく、一回見かけた時にはアメリカ盤ジャケットだったがために、別のアルバムと勘違いして買わなかった…、それでも4000円くらいしかのかな。あとでアメリカ盤とイギリス盤で全然ジャケットが違うことが判明して割と悔しい思いをしながら、結局イギリス盤を見かけなかったような気がする。そんですっかり忘れ去っていたんだが、昨年かな、CDがリリースされるというのでちょっと話題になってたマーサ・ベレツ。手に入れて聴いて感動してたんだけどその内に書こう、ってすっかり失念してましたねぇ。この機会に書いておきましょう。

 1969年リリースの「悪魔と天使」という意味での「Fiends and Angels」というタイトル。「友達と天使」ではないですが、割と間違えやすい(笑)。こうして見るとアメリカ盤の方がジャケットにインパクトがあるのは事実でして、うん、英国人なんですけどね、彼女。ただ中身の声を聴いてしまうと、アメリカ盤のジャケットのインパクトの方が正解だろう、っていう感じはするが(笑)。

 もうねぇ〜、思い切り好みの音でして、そりゃまぁ、マイク・ヴァーノンのプロデュースによるものなので思い切りブルースに決まってるんだよ。しかも彼女はジャニスが脱退した後のThe Holding Companyにボーカルで加入のウワサもあったくらいの迫力絶叫系ボーカルのお転婆お姉ちゃんなワケで、聴いていて吹っ切れてて心地良い。マギー・ベルほどの凄みはないんだけど、それでもかなり面白い域に達していて正に60年代後期の英国ハードロックってなモンだ。あ、バックがね。


 そのバックなんだけど、これもマイク・ヴァーノンの力によるものだが、なんと思い切り全盛期のクリームの面々からクラプトンとジャック・ブルースを呼び込み、この二人にはジム・キャパルディのドラムと絡ませて思い切り激しく派手なブルースロックを何曲も展開してくれる。正直言ってマーサ・ベレズの歌声など全く耳に入らないくらいに二人の演奏に耳が行ってしまうんだな。やっぱりこの頃は凄いわ。それとマイク・ヴァーノン絡みなのでフリーのポール・コソフも参加しているのだが、これもまたジム・キャパルディやクリスティン・マクヴィのピアノなんてのと絡めて元々スワンプ系への参加が多いポール・コソフのこれまた全盛期のアグレッシヴであのタメが聴いたギターが聴けるという代物。それと何曲かではスタ� ��・ウェブのブルースギターも聴けるので、当時のブルースギタリストとしてロック界に名を馳せようとしていたメンツが揃っている。なんともまぁ、豪華なアルバムになったことだろう。

 あまりにもゲスト陣が豪華なので肝心のマーサ・ベレズについて語られることは少ないんだけど、ミックスの問題も大きいよなぁ、多分。自分的にはかなり好きなタイプのボーカルで、もっとこういう弾けた音を歌って欲しいものだし、どんどん作品をリリースして欲しかったなぁ。何枚か他にもリリースされてるけど、そこまで追いかけていない…ってことはそれほど入れ込んでないってことか(笑)。

 いやいや少なくともこのアルバム「Fiends and Angels」については歌もかなり楽しめる作品です。まぁ、ゲスト陣が凄すぎるけど…。



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