2012年1月28日土曜日

【Infostand海外ITトピックス】 NokiaとMicrosoftの本命スマートフォン 「Lumia 900」登場 -クラウド Watch

 2012年に入って最初の注目スマートフォンと言えば、Nokiaの「Lumia 900」になるだろう。Microsoftの「Windows Phone 7.5」(開発コード名:Mango)を搭載して次世代通信規格LTEをサポートするハイエンド機種だ。NokiaとMicrosoftの提携の成果だが、「iOS」と「Android」が圧倒的なスマートフォン市場に食い込み、"3陣営"の構造をつくれるのだろうか。

背水の陣のNokiaとMicrosoft

 iPhoneとAndroid勢に押され、新しいスマートフォン化の波に乗り損ねていたMicrosoftとNokiaは2011年2月、手を組んだ。Nokiaは「Symbian」を捨て、敵であったMicrosoftのWindows Phoneを採用する決断を下した。Microsoftは、Windows PhoneでのパートナーだったHTCやLGなどのベンダーがAndroidに主力を移してゆく中、かなりの資金をこの提携につぎ込んだと言われている。

 Lumiaシリーズはその成果で、昨年秋、Nokiaの本拠である欧州で発表。第4四半期に欧州など一部地域で販売を開始した。Lumia 900はLumiaシリーズの3番目の機種にあたり、LTEサポートと大画面を特徴とするフラッグシップ端末だ。この端末には、両社のさまざまな期待が込められている。

 Nokiaにしてみると、半ば撤退状態だった北米市場へのカムバックとなる1台であり(Nokiaは「北米市場向けに開発した」と強調している)、Microsoft側からみるとMangoを搭載した、初の本格的なハイエンド"本命機種"となる。Lumia 900は年明けにラスベガスで開催された「CES 2012」で発表され、AT&Tが独占販売すると伝えられた。価格や提供時期は公表されてないが、3月との見方が強い。

 

発売1週間でタダ! 本命投入前のつゆ払い?

 その「Lumia 900」投入の前哨戦となったのが、すでに欧州で販売中のミッドレンジ端末「Lumia 710」の投入だ。Lumia 900発表の2日後の1月11日、T-Mobile USAが米国での提供を開始した。だが、発売して1週間もたたないうちにWal-Martが値下げ。なんと2年契約するとタダ、という扱いになった。

 端末の値下げは、通常、売れ行きが芳しくなかったり、旧機種になったりした場合の在庫整理で行われることが多い。では、Lumia 710は売れ筋から外れたのだろうか?

 Information Weekは、「多くの場合、値下げは悪い兆候だが、Lumia 710については、その心配はない」と見る。Wal-Mart以外ではT-Mobile USAの49.99ドル(2年契約)、Amazonの99.99ドルなど価格は下がっておらず、「製品の失敗と決め付けるには時期尚早」という。それどころか、レビューでは「同じ価格帯のAndroid端末よりもよくできている」と称賛する。

 同様に、タダになったLumia 710を、同じくタダとなっている「iPhone 3GS」、1セントのAndroid端末「HTC Inspire 4G」と比較したPC Worldも、iPhoneが2機種に劣るとしてApple側に警笛を鳴らした。なお、T-Mobile USAのWindows Phone2機種として、「HTC Radar 4G」とLumia 710を比較したZDNetは、HTC Radarの方に軍配を上げている。

 Forbesも値下げを、悪い兆候ではなく「販売促進になる」としている。Lumia 710の価格戦略がうまくいけば、本命のLumia 900に向けての素地(そじ)が整うというのだ。Windows Phoneにも好意的だが、「レビューの結果は良いが、コンシューマーが新しいUIを受け入れるのかは別問題」と課題を挙げる。

 Forbesなどが示した課題は、実際にシカゴでショップめぐりをしたというMedill Reportの記事でもうかがわれる。ショップの店員からは、認知度が低い、広告が足りないという指摘もあれば、「Windows(Phone)は少しずつ支持を得始めた」という意見もあったという。

 

評価は高い新Windows Phone

 このように"業界の評判は悪くないが、消費者のマインドシェアが低い"。これがWindows PhoneとLumiaの現在といえる。

 MicrosoftとNokiaの期待を背負うLumia 900は、スマートフォン市場の状況を変えるのだろうか? これを占う業界の評価は好意的で、The Daily Beastのレビューは「Appleのデザインを大きく超えた」とまで絶賛する。「これまで使用した中では最高の携帯電話。(Lumia 900と比較すると)iPhoneは古く見えるし、Androidは大きくてやぼったく感じる」と言い切る。

 メディアにWindows Phoneでの楽観論は多く、EE Timesは「2015年にWindows Phoneは第2位のスマートフォンOSになる」というIHS iSuppliの予想を紹介している。NokiaがWindows Phoneを担いだ効果で、2012年のWindows Phone端末の半分はNokiaとなり、2015年にWindows Phoneは16.7%のシェアをとってiOSを超えるというのだ。なお、2011年時点のシェアは1.9%にすぎない。アプリのエコシステムも、Nokia効果により成長するとIHS iSuppliはみている。

 だが、米国でのNokiaの存在は小さく、努力が必要――とガジェットニュースのSlashGearは指摘する。端末については「CES 2012で誰もが話題にしていた」と評価するが、適切な価格をつけて再度米国市場を開拓する必要があるだろうと述べている。

 先のThe Daily Beastは、モバイル業界を1890年代の自動車業界に例え、よくある「Microsoft/Nokiaの到来は遅すぎた」という見方を否定する。最初の自動車業界は、まだハンドルの形すら定まっていなかった。同様に、スマートフォンのUIもまだ決まったわけではない。まだまだ変わっていくだろうというのだ。

 スマートフォン業界が今後も長く成長することには誰も異論はないだろう。だが、NokiaとMicrosoftの時間と資金は永遠ではない。Nokiaは1月、450件以上の特許を特許管理会社に売却したと伝えられており、株価の低迷も深刻な問題となっている。Microsoftも主力事業がクラウドベンダーに押され気味である。

 Windows Phoneは両社にとって極めて重要な製品なのだ。

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